トピック一覧

  • なぜソフトウェア品質会社がマーケティングを?
  • カスタマージャーニーとは?
  • なぜ今カスタマージャーニーが重要なのか
  • 新しいテクノロジーとカスタマージャーニー
  • カスタマージャーニー分析の活用法
  • 顧客視点の重要性

こんにちは、ふるさわです。
先月4月28日に、マーケメディアセミナー&カンファレンス「最新カスタマージャーニー動向セミナー」に登壇しました。
本稿は、2部構成の前編【概念編】です。当日詳しくお話しできなかった部分も含めて、講演内容の解説を進めます。

この記事を読むのがめんどくさいという人は、上のスライドをざっとご覧ください!

なぜソフトウェア品質会社がマーケティングを?

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開始前に、弊社と私のご紹介にお時間をいただきたいと思います。我々は、日本国内のヒューマンクレストとヒューマンネクスト、それからベトナム現地法人のJPQという3社からなるグループ会社です。創業が2002年で、今15期目ですかね。社員はだいたい140名、主要事業がソフトウェア品質関連事業です。

なぜそんな弊社がマーケティングのイベントに出てくるのかというと、品質を見ているなかで、「ユーザーさんが本当に求める品質とはなんなのか」を、クライアント企業からリクエストされるようになったからなんですね。

企画や開発の要求仕様通りにサービスを作っていればそれで良いものではない、ということです。「魅力的な体験を提供しているのか」「使い勝手はどうなのか」「そもそもその商品はニーズがあるのか」というような根本的な問いに対して、ユーザーにとっての魅力的品質を追求するようになりました。その後、マーケティング施策にもいろいろと関わるようになり、今回機会があって登壇させていただく流れになりました。
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主要取引先としてはこちらです。錚々たる会社様にお取引いただいています。
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では、私の紹介です。
株式会社ヒューマンクレストの事業開発室(新規事業の開発部門)におります。2009年に大学を出まして、大規模キャンペーンのオペレーションや開発からキャリアをスタートさせました。
その後、スマートフォンゲームや大手ネットスーパーの品質管理やマーケティングに関わるようになり、自社のユーザーリサーチサービスEMOLOG(エモログ)を新規事業として立ち上げ、今に至ります。
グラフィックデザインからコーディング、マーケティングまで色々とやるのですが、ベースはエンジニアです。小さい会社であまり分業ができない理由もあって、基本的に何でもやらなきゃいけないのです。

登壇実績としては、2016年12月に開催されたMarketing Special Dayという一日イベントの1コマなどがあります。内容は下記の記事で同様に解説していますので、よろしければ合わせてご覧ください。

Marketing Special DAY
http://www.marke-media.net/seminar/marketing_sp/
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1枚6,800円の下着が売れた理由は? 新時代のマーケターが注目すべき“テストマーケティング” Marketing Special Day登壇【前編】
ユーザーリサーチは改善のためだけのものじゃない! これからのマーケは共感を熟成し「みんなゴト」にする Marketing Special Day登壇【後編】

これからお話しすることは、弊社で運用しているユーザーリサーチサービスEMOLOG(エモログ)の事例に基づいた内容になります。
どちらかというとUXの観点が強くなるかと思いますが、カスタマージャーニーについて事例をベースに、詳しくお伝えできればと思っています。

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本日のトピックです。
まず「カスタマージャーニーの現在」ということで、購買シーンの多様化と、そのデータの多量化についてお話します。
続いて「カスタマージャーニーを分析する」と題して、従来の分析手法との違いや新たなテクノロジーとの関係性、活用方法を絡めて、顧客視点の重要性について説明します。
最後に、10の事例からみるカスタマージャーニーの「事例紹介」を行いたいと思います。

カスタマージャーニーとは?

では、参ります。
まずはアイスブレイク的に、軽い内容から入りたいと思います。
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これは、Googleでの「カスタマージャーニー」の検索結果です。
これは画像検索ですが、通常のテキストサーチでも同様です
このように、一般的には

カスタマージャーニー=カスタマージャーニーマップ

という解釈なんですね。
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次に、Google Trends(国内)の結果です。
UXマップと比較していますが、これはカスタマージャーニーマップの元がUXマップであったことを説明したいがために、こうしました。
Google Trendsでは2004年以降しか検索データを拾えないのですが、これを見ると、2004年以前にUXマップが着目され、その後一時的なトレンドの浮き沈みがあり、2013年頃からカスタマージャーニーの文脈で注目され始めたことを示しています。
そこから徐々に検索ボリュームが増え始め、2015-16あたりで一度沈んだものの、2017年現在で最高値に達しています。

そんなカスタマージャーニーですが、簡単に何を示すものなのか?を解説したいと思います。

フォーマットは色々あるのですが、ここでは最もベーシックなものを参考に進めます。
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私の解釈では、カスタマージャーニーを「顧客軸で企業との接点を時系列に記した体験ストーリー」と定義しています。
よく「購入までのストーリー」と言われることが多いのですが、購入からその後(他人へのシェアやリピート)までスコープに入れて、多様化した購買行動を捉えようっていうのが、今風だと思います。

フェーズには、マーケティングの基礎、消費行動のAISASモデルを参考に入れています。これは対象サービスの特性によって、柔軟に取って代わるものです。

次にチャネルとタッチポイントですが、これがカスタマージャーニーマップの肝ですね。後からも申しますが、様々な場所やデバイスを絡めた超マルチチャネル化が進む一方なので、頭ではなんとなくわかっていても、ここでどのようにチャネルを横断して、各タッチポイントへ触れていくのか、適格に整理する必要があるのです。

行動は、次の3つのモデルで整理しています。

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これはサンフランシスコに拠点を持つUX専門コンサルティング会社のAdaptive Pathのもので、顧客の行動を次の3つのパターンで記述しています。
図の左から、以下のような顧客行動を表しています。

    • 時間軸がない行動群(Ongoing, non-linear)

ある目的のために行う時系列に沿わない一定のプロセス

    • 何かが終わって何かが始まる行動(Linear process)

ある行動が終わって次の行動が始まるプロセス

    • 時間軸がある行動群(Non-linear, but time based)

ある目的のために行う時系列に沿った一定のプロセス

引用元:Web担当者Forum
2時間で作るカスタマージャーニーマップ 実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/27/16409

最後に感情ですが、これは各チャネルとタッチポイントにおける行動で発生した、感情のアップダウンを示しています。

では次に、カスタマージャーニーマップの様々なフォーマットを事例でご紹介します。

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これはタイムライン型と呼ばれるもので、先ほどと同じフォーマットですね。
この例は、Airbnbを使って友人と2人で海外旅行を探し~オーナーを決めて~宿泊し~宿泊地(オーナー)を評価するまでの体験をマップ化しています。
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これもタイムライン型の例で、感情変化の美しい記述が、好例としてよく取り上げられるものです。
内容は女性が引越しによってプロバイダを変更する体験です。上段では主な思考を文字で記し、中段では感情の起伏を曲線で表現することで、サービスへの満足や不満足に繋がる事象を明示しています。
下段では、その体験のサマリーと改善方針を示しています。
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次にホイール型と呼ばれるもので、ルーティンの体験を環状に記述したものです。
これはLEGO社が社内で体験(WOW)を定義・設計するために利用しているテンプレートで、この内容はロンドンからニューヨークに行くまでの体験が記述されています。
円の中心部はペルソナで、その周囲は「体験前」「体験中」「体験後」という3つのフェーズに分けられています。また、それぞれのフェーズで起きるできごとが一文で書かれており、そのときの感情がアイコンでわかりやすく示されています。
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次に、インフォグラフィックスとして対外的にも使われるフォーマットの例です。
左はスペース型と呼ばれるもので、まさにジャーニーマップを擬似的な地図として表し、顧客が移動する体験も含めて俯瞰的に見ることができます。この例では、個人間カーシェアリングサービスの入会から予約支払い、利用、返却などの手順を追って、借り手と貸し手のタッチポイントごとの顧客体験に関して、屋外や街中の移動をともなう物理空間で記述しています。
右の例は人の生活軸でホイール型に展開されています。テレビを観てスマホの新商品を知り、ネットで購入し、届き、初月の利用料の支払いをし、引っ越しで住所変更をしたり、最終的には壊れて新しいスマホに買い替えたりなどの利用サイクルが示されています。

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こちらはこれまでのカスタマージャーニーとは異なり、各フェーズに対してどのようなスタイルのコンテンツマーケティングが向いているか、ということを説明しています。
ここでいうコンテンツとは、決してブログだけを示すものではありません。動画であったり、ダウンロードコンテンツであったり、オフラインのイベント、雑誌など見込み客や顧客が価値を感じ、喜んでくれるコンテンツを適切なタイミングでカスタマージャーニーに沿って届けるための、設計図として使われています。

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あまり言うまでもありませんが、今ではオンラインのトラフィックベースでカスタマージャーニーを把握することが当たり前で、Google Analyticsの行動フローなどをベースにユーザー行動を把握されている方も多いのではないでしょうか?簡易的にリファラルを確認して、誘導元広告のボリュームを把握したり、離脱ページを把握できたり、何かと便利ですよね。スマホアプリにおいてはファネル分析と言ったりします。
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一方で、カスタマージャーニーではコンバージョンのタイミングを評価する必要があります。
これは入り口(主に広告)とリターンを踏まえた、CVタイミングの評価方法です。
リテンション分析、最近ではコホート分析と言ったりもしますが、これによってセッションを跨ぐコンバージョンの分析が可能になります。例えばこれは弊社のデータなのですが、最初に来訪してから3日目と5日目でCVが多いことを示しています。

アトリビューション分析は広告CPAに代わる新しい評価手法で、5つのモデルに応じて貢献度を数値化します。マーケティングチャネル別でコンバージョンの価値を評価できるようになるのです。
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Googleは3.6億件の行動データから導いた、業種・地域別のカスタマージャーニーの参考データを無償で公開しています。
これは日本の旅行業界における、オンラインでの接触タイミングについてのデータです。このデータでは、申し込みの5.1日前にソーシャルメディアで接触し、1.9日前に検索で接触する行動が明らかになっています。
あくまでオンライントラフィックに限定されてはいますが、さすがはGoogleといったところですね。まだ実務に落とし込めるレベルではありませんが、この莫大なデータがものをいう時が近いかもしれません。

なぜ今カスタマージャーニーが重要なのか

では、なぜ今カスタマージャーが注目され、見直されているのでしょうか?理由は多々ありますが、要点をまとめると次のスライドのようになります。
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では一つひとつ、理由を紐解いてみたいと思います。
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まず消費行動が断片化され、利用状況を特定しづらいです。
これは言うまでもなく、コンバージョンに至る(その後も含めて)タッチポイントが超マルチチャネル化していることを示しています。
昨今、Webサイト、メール、モバイル~屋外広告など、顧客とのタッチポイントは多岐にわたります。

これはGoogleによるレポートです。例えばエンターテイメントや旅行においては、クロスデバイスでのコンバージョンが、それぞれ12%、8%発生しているとのことです。
最近ではcriteoのレポートでも、クロスデバイスについて言及されていましたが、ジャンル別のここまで細かいレポートは他にありませんでしたので、ご紹介しておきたいと思います。

Google は今後、AdWordsの主機能として、クロスデバイス・リマーケティングに注力するようです。秘訣はGoogleアカウントによるログイン情報で追跡するとのこと。
ログインありきの制限はありますが、マーケターからすると楽しみな機能ですね。

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次に企業側は顧客のタッチポイント別で担当アサインするです。
例えばコーポレートサイトは広報担当、ブランド(商品)サイトはWEBマーケティング担当、問い合わせはカスタマーサポートといった風に、ユーザーにとってのタッチポイントが横断的に管理されていないことを示しています。
とはいえ一人で仕事はできないのでしょうがないのですが、顧客は企業の部分的な対応の良し悪しより、全体最適を求めるということを、ここでは指摘しています。
皆さまも過去にとあるサービスで担当者の対応が悪く、サービス全体に怒りを覚えた経験などありませんでしょうか?

企業視点で言えば、この分業制はチーム全体の目線と目標が分断する要因になったり、ジョブローテによってそれまでのナレッジが分断する恐れがあります。

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最後に顧客を取り巻くデータが膨大で扱いきれないです。
自社DBやGoogle/Adobeをはじめとする外部トラッキングツールの普及によって、今やみるべきデータがどんどん増えています。さらにSNSや広告接触、自社サービス外でのオーディエンスデータなどの社外データも合わさり、データ量は増える一方です。
この膨大なデータを正しく集計して分析できれば精度の高い1to1アプローチが可能になると言われていますが、現状ではまだまだ実務に落とし込めておらず、成功事例は少ない現状です。

そこで。
カスタマージャーニー分析は、次のように上述の課題を解決し得るんです!
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    • チャネルを横断した消費行動を見える化できる

→カスタマージャーニーマップの真価がここで発揮されます。

    • 顧客視点を第一に考えるスタンスを共有できる

→自分の担当以外(特に前後関係)のタッチポイントを共有できます。

    • ユニークな行動データからニーズを想像できる

→ペルソナ単位で一人ひとりの行動を追いかけることで、効率良くニーズが把握できます。

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マッキンゼーの調査によると、カスタマー・ジャーニーが進むにつれて顧客満足度も比例して高くなります。つまり、カスタマー・ジャーニーにおける対ブランドとのタッチポイントが多ければ多いほど、顧客はブランドに対する愛着が湧き、満足する傾向があるということ。
そして、顧客満足度が上がれば結果として企業の収益性が改善されます。
それだけではありません。優れたカスタマー・ジャーニーを実現することによって、これまで複数のチャネル間で発生していた対顧客のサービス投資コストが平均10~20%もカット、売上も5~20%アップが期待され、顧客満足度も約30~40%ほど向上するそうです。

すごいですね~

ここでいったん、これまでの小まとめです。
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新しいテクノロジーとカスタマージャーニー

これよりカスタマージャーニーの分析を中心とする話しに移りますが、まずは従来のアクセス解析アプローチとの違いについて述べます。
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アクセス解析は、匿名化したユーザー行動をCookieで追跡して把握しよう、というのが趣旨ですね。改善指標としてはユーザーの入り口(広告/自然検索)と、検索エンジンにスムーズにクロールさせる目的のサイトマップなどがあります。
KPIとしてはPVや離脱数(率)などがありますね。

対して(決して最新ではないかもしれませんが)カスタマージャーニー分析では、WEB以外も含む顧客接点の全体をきちんと把握しよう、というのが一番特徴的ですね。ユーザー像をペルソナとして認識した上で、その行動と理由をハッキリさせるアプローチです。
着目指標としては、LTVやリテンションなどの、いわゆるロイヤリティ指標になります。ちょっと浮いて見えるかもしれませんが、ユーザーの声をきちんと聞く目的で、コメントも重要な要素になります。

サイト構造を分解するアプローチに対して、ユーザーの段階的なタッチポイントを評価しよう、というのがカスタマージャーニー分析の骨子です。
時間軸で、顧客としての成長段階を踏まえたコミュニケーションのマネジメントなんですね。

ここで、新しいテクノロジーとカスタマージャーニーの話です。
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まずDMPによるカスタマージャーニー分析は、顧客化したユーザーを、広告接触や流入前の検索行動だけでなく、登録情報や意識調査データ、購買行動データ、ソーシャルメディアのデータを組み合わせることで、顧客情報をリッチ化して洞察することができます。意識調査では現れない行動データと、行動データだけでは分からない意識変容過程などを統合することで、顧客化の文脈を可視化できる可能性があります。

次に、ここではオムニチャネル系アナリティクスと言っていますが、Facebook Analyticsなどのリアルコンバージョンを把握できるツールも、場合によっては有効になる可能性があります。WEB(SNS、自社サイト)と物理店舗で起きたことの隔たりを埋めよう、という試みです。

しかしこれらもまだ……
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DMPはウェブブラウザが保持できるCookie追跡が基本となり、外部データを使って劇的に成功した事例はまだそれほど多くありません。今後GoogleやYahooなど、ビッグアカウントベースでの追跡が普及すれば、話はまた違ってくるのでしょうけど。。

Facebookの方は、今のところオフラインのコンバージョンはCSVなどの手動連携が必要であることがネックですね。例えばPOSデータとの連携など、フォーマットの問題も気になります(現状のフォーマットを把握していない状態で言っているので、間違えていたらすみません)。あと、リアルとネットそれぞれのコンバージョンに関しては、分けた状態ではニーズを把握しやすいと思いますが(これまでと同じなので)、合わせた時にどう分析するのか?その際のデータ量として、適切な量を取れるのか?という素朴な疑問が残ります。

つまり、カスタマージャーニーと新しいテクノロジーの関係性はまだまだ勝ちパターンがない状況で、事業社側もツールベンダーも模索中というステータスだと思います。
どちらも近い将来にはすごく可能性がある手段のように思いますが、あと数年は待たざるを得ませんね。

さて、とはいえデータドリブンにカスタマージャーニーを捉えたいというご要望もあるかと思いますので、ポイントのみ掻い摘んでご説明します。
キーワードは、網羅性粒度です。

網羅性とは、カスタマージャーニーの全体をカバーしましょう、ということです。ペルソナ単位で、購入の1サイクルを確実に捉えましょう。取り扱うサンプルは、量より質が重要になります。

粒度は(扱える範囲内で)明細データがベストです。時系列に遡ったり、行動の背景と理由を追いかけたり、深堀ができるからです。

コツは次のスライドです。
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ログのトラッキングは、実はカスタマージャーニーの分析としては相応しくありません。例えばECサイトの行動フローを追っても、トップ→主要カテゴリ配下(もしくは検索結果)→カゴ画面のような王道フローがボリュームとして見えてくるので、当たり前というか、それ自体に大した意味はありません。

カスタマージャニーアプローチでは、ペルソナ単位で一人ひとりの行動を追いましょう。そして、行動データとして取れない部分に関してのみ、ユーザーに直接聞きましょう。そうすることによって、論拠のあるカスタマージャーニーを把握することができます。

カスタマージャーニー分析の活用法

次に、おススメのカスタマージャーニーによるアプローチです。
これは、弊社のユーザーリサーチ案件でよく採用する、カスタマージャーニーアプローチです。
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新規サービスであれば企画・開発の上流で、既存サービスであれば改善計画初期のタイミングで、一度整理を進めています。

具体的な手法(どうやってカスタマージャーニーを描くのか)については、顕在ニーズをアンケートやインタビューで、潜在ニーズをヒートマップやユーザーテストで収集します。全体のとりまとめをワークショップで行うこともありますが、弊社ではあまり、ワークショップ単体でのカスタマージャーニーの整理は推奨しません。より体系だったリサーチを目的とするからです。
このあたりの詳細については、後ほどまたご説明いたします。

続きまして、じゃあどうやってカスタマージャーニー分析の結果を活用するの?というお話しです。
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ここでは、横軸を「Outside-in 顧客視点」-「Inside-out サービス(提供)視点」というプレイヤーの違い、縦軸を「To-be 理想体験」-「As-is 現状体験」という風に体験の性質で分け、4象限で整理しています。

これでいうと、第一象限(サービス側が提供し得る理想体験)で感動を与えるサービスが、第二象限(顧客視点の理想体験)として問題ないサービスが当てはまります。
次に、第三象限(顧客視点の現状体験)でユーザー行動の分析を、第四象限(サービス側の現状体験)でサービスの現状分析を行い、整理しましょうということです。

これを、まずは概念的なレベルにおいてどう活用するのかについて、次の説明になります。
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簡単に言うと、第三象限のユーザー行動分析から、第一象限の感動を与えるサービスを導こう、ということです。
これにはある程度の変換スキル(ユーザーニーズを体系立てて収集し、それをサービスの機能に落とし込む)が必要ですが、それがカスタマージャーニーアプローチによって、進めやすくなるのです。

よくある活用失敗パターンとして、次のような例があります。
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ユーザー行動分析から問題ないサービスへの改善。これはいわゆるユーザビリティテスト止まりのアプローチで、非常に惜しいですね。
惜しいというのは、ユーザーの意見を取り入れただけで終わり、ユーザーの想像を超える(感動を与える)サービスまで昇華できていないことを言っています。

後で詳しく申しますが、人には自分の考えていることを口にできない、非言語化ニーズというものがあり、あと一歩で到達できていない状態がこれにあたります。

次に、ユーザー行動分析からサービス現状分析を行う試みです。意味自体は否定しませんが、カスタマージャーニー分析が本来もつはずの、サービスへのフィードバックがない(もしくは薄い)点において、未活用と言えます。
ただ、ここ止まりのリサーチ案件が一般的に多いことも事実です。その意味では、問題ないサービス、あるいは感動を与えるサービスへの事前ステップとして捉えると、有意義と言えるかもしれません。

サービス提供側が現状について自己分析を行い、問題ないサービスへ改善しようとするアプローチは意味がないとは申しませんが、限りなく自己満足に近しいものだと思います。これを続ける事で、いずれ正解に到達できる可能性は否定できませんが、それをやるならユーザー分析を行った方が、はるかに速いと思います。

サービス提供側の自己分析によって、ユーザーに感動を与えるサービスを導くことは、まずあり得ません。

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その他よくある失敗パターンです。
実務ベースでは、これらのパターンの方がもしかしたら多くなるかもしれません。。

顧客視点の重要性

ここで改めて、顧客視点について整理します。
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カスタマージャーニーによる分析というものは、100%顧客視点をもっている状態で成立します。
これに事業者視点が混ざり込むと、誤って事業社都合の顧客成長モデルが記述されることがあります。

さて、顧客視点は顧客の声を全て聞いていれば良いのかというと、そうではありません。
顧客は時として嘘をつくからです。

ユーザーインタビューの5大原則というものを紹介します。
「聞く」「今を知る」「具体的に」「過程」「課題」を聞くのは良いのですが、「賛同」を得たり、「未来のこと」を聞いたり、「抽象的」であったり、「結果」や「機能」についての回答は、無意味な嘘になります。

それらは、聞いても人が口にできない非言語化情報であったり、サービスデザインの素人であるがために、参考にはならないことが多いからです。

よくあるダメなパターンが「先ほど便利と仰ったこのサービス(もしくは機能)が1ヶ月後にリリースされるのですが、使ってみたいと思いますか?」などの質問です。この質問には、NGパターンの全てが当てはまります。

ユーザーに弟子入りする態度で、今感じている具体的な課題とその理由を追求しましょう!

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これはよく言われるUXの氷山モデルというもので、顧客視点を獲得するためには「顧客の声」と「行動観察」の両方が必要になります。

まず顕在ニーズとして、人が自分で言葉にできる情報は、実のところほんのちょっとなのです。
この言語化情報の入手は比較的容易で、一般的にはアンケートとインタビューが採用されています。

あとは全て非言語化領域になります。
中間層には引き出せば言葉にできる潜在ニーズというものがあり、これらはデプスインタビューで取得できることがあります。参加者同士で同調を呼んでしまうグループインタビューなどは、オススメできません。

最後に、超潜在ニーズです。
これらは完全に無意識下のもので、ユーザーが言葉として発することは、まずありません。マウスの動きやクリック、スクロール、指の動きやタップ、そして注視など、ユーザーの振る舞いそのものに表面化します。
そのため、手法としてはユーザーテストやヒートマップ、アクセスログなどの行動観察でのみ、取得することができるのです。

どちらかというと皆さまに馴染みがないと思われる、ヒートマップとユーザーテストについて、それぞれの特性を次に整理します。

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ヒートマップツールは、ユーザーがページ内のどの部分でクリックしたのか、タップしたのか。どの部分が注視されているのか。画面のスクロールはページ内のどれくらい下部まで到達しているのかなど、定量的な行動データを視覚的に把握できます。

どのように評価するのかというと、ページ単位やパーツ単位で、レイアウトの検証が可能です。例えば、一番上にAというコンテンツがあったとして、それがあまり見られていなかったとします。そこで注視率の高いBというコンテンツを上げて、Aを下げるなど。そういうページレイアウトの検証ができるんですね。

セグメント別でヒートマップを眺めることも重要です。簡単にいうと、コンバージョンありのユーザーのヒートマップは、良いものとして考えられる。逆に、コンバージョンなしのユーザーの行動は、悪いものとして考えられます。その「悪い」レイアウトを改善するために、ヒートマップを活用できるのです。

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ユーザーテストはもっと馴染みがない方が多いかもしれません。ユーザーの行動をデータとしてだけではなく、追体験できることが最大の特徴です。
まず、弊社では代表ユーザーと言っているのですが、自社サービスのメインターゲット層と同じセグメントのユーザーを、モニターとして集めます。もちろん、自社サービスの既存会員に対して、直接ユーザーテストのリクルーティングを行うクライアントさんもいらっしゃいます。

次に、そのモニターにタスクを課します。例えば、「会員登録してください」「商品を選んでみてください」「購入してみてください」などの行動指示になります。その実行過程を観察するのです。

もう1つ重要なのが、どこでなにを感じたのかを言葉としてアウトプットさせ、体系的に収集することです。評価指標としては、タスクの達成率と経過時間、あとは操作中のとまどいが発生したポイントとその経緯などです。間違った解釈が黙認されている場合があるので、コンテンツの理解度などを、追加でヒアリングしたりします。

ユーザーテストでできることは、コンテンツの調整です。「BというコンテンツをAというコンテンツの前に追加した方が、文脈としてわかりやすい」「Cというコンテンツは逆に意味を成さない」など。または「Aというコンテンツの内容を見直して、Aプラスというコンテンツにしたほうが良い」など、ユーザーの声を基準に、コンテンツの質を検証できます。

あとよく聞かれるのが、モニターの人数についてです。モニター何人に対してテストを行うのが適切なのかということです。答えは5名です。

ただし、完全に同一のセグメント内で5名ということです。この業界ではよくマジックナンバーと言われるのですが、5名のモニターへ適切なシナリオでテストを行うことで、そのセグメントが抱える81%のユーザービリティ上の問題が明らかになる。
ヤコブ・ニールセン博士の調査によると、そう言われています。

最後に、カスタマージャーニー分析に関する、小まとめで締めくくります。
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前編の概念編は、いったんここまでとします。

後編の事例紹介は近日公開、お楽しみに!

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ヒューマンクレスト事業開発室長でEMOLOGの生みの親。デザインからフロントのコーディング、ウェブマーケティング、広告運用など雑務一般もこなす。どれだけ否定されようが、食べれない魚を釣るのが好き。最近のマイブームはモケケ。